注がれた恋と手渡す苦さ

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まず第一。若い女の子に分かりにくい略称で頼むのをやめて欲しい。伝わると思ってるの?自意識過剰過ぎ。 その二。銘柄を間違えたからって怒るのをやめてください。カルシウム足りないんじゃないの? 最後。 「こちらですね。それでは年齢確認のボタンを…」 「あ?俺どう見たってオジサンだろ?そんなこともわかんねーの?」 店員の言うことを聞けやこらああああああ! 「……申し訳ございませんでした。それでは一点で440円です」 週に2回、1日5時間のアルバイトの中で10分いや5分に一人は煙草を買う客がいる。入り口のセンサーを鳴らしたや否やまっしぐらにレジへ買いに来る客、沢山の食品を買い込んだついでにカートンで買う客。買う人も様々だ。昼休みに駆け込むサラリーマン、香水を撒き散らすママ、競馬新聞がお供のワンカップジジイ。 「ありがとうございましたー」 敢えてまたお越しくださいませは付けなかった。ほんの少しの意地悪を許してください。 補充しても補充しても店から消えていく煙草はこのお店の中でもワンツーを争う主力商品だ。買う客を恨んだら私の給料が減るのは分かっているが嫌な客には悪態をつきたくなるものだ。 「若葉ちゃん、今の態度はまずいかも」 「やっぱりそうですかね」 私が働いている土日の午後のシフトの内、日曜日の方の相方の七星さんは1年近く同じ時間で働いているから私の猫被りなんててんで通じない。だからこそ一緒に働いていて気が楽だ。 「年齢確認のボタンなんて自分でぽちーーと押せばいいのよ。もう、また店長に態度悪いって怒られるわよ」 「はあい」 土曜日のお昼はやたらと忙しい。オフィス街の駅に近い店だからか昼ご飯を求めて来るサラリーマンや部活帰りの学生が多く来るからだとは思うがそれでもこの店は人が来るのが多すぎだ。レジに自分のバーコードを通しながら私はぼんやりと考えていた。 ここの店をアルバイト先に選んだのは家が近かったからだ。往復合計でカップラーメンが作れる位の通勤時間でアルバイトが出来るのは私にとって魅力的な条件だ。 「じゃあ私返本行ってくるから。競馬の新聞よろー」 「はぁーい」 家に近いからここから電車で一時間掛かる高校のクラスメイトに会う訳もない。だから私はこの職場が好--- 「いらっしゃいま……せ」 退屈はいつも突然打ち切られた。
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