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この学校には校舎が二つ。教室がある新校舎と、特別教室が沢山ある旧校舎。旧校舎はもうすぐ取り壊されるから教室を使う授業じゃないと生徒はほとんど寄り付かない。さらに屋上は基本鍵がかかっている"はず"だった。でも鍵はかかっているが錆びていてつまりほとんどその意味を為さないはずということを私は知っていた。
「(いた)」
その先輩はそこで目を閉じたまま微動だにしなかった。腕を組んで不機嫌そうに寝ている。
「……来たはいいものの、何言おう」
私は毎週あなたの犯罪を見ていますよー、なんてとても言えない。
じゃあ何で私はここにきたんだろう。そっと見知った顔を覗き込む---
「君、何してるの?」
「う、うわあああ!!!」
目の前で閉じていた目がぱっと開き、瞬間私は仰け反って尻餅をついた。
。
「ったた……」
「大丈夫?」
さっと手を差し伸べる先輩に甘え、体を起こす。スカートに埃が付いてしまった。
「ここは立ち入り禁止だけど……あれかな?君も一人になりたかったとか」
「え、あ、 いや覗いていた訳じゃ……え」
一人になりたかった、とは。
「そうだ、君でしょ?俺がいつも煙草買ってるの、見逃してくれたの」
「…」
唐突にそう言われ何も言うことが出来なかった。
「まあここに座りなよ」
もう一度旧校舎の屋上に腰を下ろす。春に近づいてる風が髪を揺らす。
「(やっぱり先輩も全部分かってたんだ。)」
くせっ毛の髪をかき上げて笑う先輩に、私はいてもたってもいられなかった。
「……もう止めにしませんか」
この胸の痞えは、先輩に全部聞かないと取れない。私はもうなんとなく分かってたのかもしれない。
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