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「なん、で」
夫はーー佳彰は、ばつが悪そうだった。
「女かどうかは、まだ分からないよな。俺……男だから詳しいことわかんねーけど、まだ三ヶ月とかだろ?」
佳彰が私のお腹を指す。新しい命が宿っている場所を。
「何で……?」
不思議でならなかった。
妊娠したことは、誰にも言ってないのに。私自身も二週間前に知ったばかりなのに。
「分かるに決まってるだろ、夫婦なんだから」
「じゃ、じゃあタバコをやめたのも、コーヒーを飲まなくなったのも、私の……お腹の子のため……?」
タバコが発する副流煙。コーヒーに含まれるカフェイン。
それらから私と子供を遠ざけようとして?
「嘘でしょ……」
「何でだよ、失礼だな。……まあ仕方ないか。俺、いい夫じゃないし。家事とかも全部莉奈子に任せっきりだったもんな」
ごめん、と謝る。
佳彰は、これからはちゃんとやるから、と約束してくれた。
信じられないような気持ちで、佳彰を見つめる。
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