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最近、夫の様子がおかしい。
「ごちそうさま」
夕飯を平らげた夫ーー佳彰(よしあき)が言った。とうに食べ終わり、食器洗いをしていた私は水道を止めて、
「コーヒー、淹れるわね」
そう言って、いつものようにコーヒー豆と手挽きミルを戸棚から取り出す。食後は一緒にコーヒーを飲むのが、私たち夫婦のおうちルールだった。
けれど、
「あ、いや……今日はいいや」
(えっ?)
ひどく驚いた。夫は一日に何杯も飲む大のコーヒー党で、特に食後のコーヒーは出さないと不機嫌になるくらいなのに。
「それよか、お茶もらえる?」
「お茶? ……玄米茶しか無いけど」
「玄米茶か……まぁいいか」
仕方なく妥協したように答えた。
私は手挽きミルを急須に、コーヒー豆を茶缶に持ち替え、首を捻りながら薬缶でお湯を沸かした。
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