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「なんて威力だ……。あれだけの範囲の爆発じゃもう……」
和也が神妙な顔でそこまで言って停止していると、隣に居たレイラが糸の切れた人形の様に膝をつく。
「サトル……大雅……」
瞳に涙を浮かべながらレイラが二人の名前を呟いた時、麻耶が足を引きずりながら二人の前に移動する。
和也とレイラの表情を黙って見ていた麻耶は二人とは正反対の笑顔で二人の肩を順に叩いていく。
そして、何かを伝えようと口を大きく開いて手話を始めた。
手話は全く読み取れない二人だが、麻耶が何を言おうとしているのかを表情で悟る。
「うん……そうだな。わかってる……。私達が信じないとな」
「あいつは俺の弟だ。こんな所でくたばったりなんかしないさ」
悲痛の表情で停止していた二人は表情を変え、再び病院の方角へ身体を向けた。
その時、一粒の雫がレイラの肩に落ちて来る。
「雨……」
そう言いながらレイラが空を見上げた時、先程までの青空が嘘のような大粒の雨が降り始めた。
シャワーを浴びるように雨を顔で受けるレイラ。
「なぁ和也……この国、私達だけで元に戻せるのかな?」
「戻せるのかどうかを議論する時間は終わっている。戻すんだ。その為に俺達は生き残った」
和也はそう言ってレイラの肩をギュッと抱いて背中を押した。
この日、PSC製薬研究所は完全に崩壊し、明神崇の計画も己の命と共に消え去った。
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