了の章

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アメリカ西海岸のビーチ。 タブレット端末でニュースを観ていた女性が二人の子供を呼ぶ。 「カール、ソフィア、パパが日本のニュースに映ったわよ」 「ほんとだ!パパは日本を救いに行ってるんだよね!」 眼鏡を掛けた少女がニッと笑い、母親からタブレットを奪い取る。 「パパはいつ返って来る?」 「さぁねぇ。あと半年は無理じゃないかな」 「ソフィア、もっと泳ごうよ!」 少年は少女の水着の裾を引っ張り、先程まで泳いでいた海岸へ走って行った。 「あんまり走ると転ぶわよー」 「はーい、ママ」 海岸に戻った少女は、浅瀬でプカプカと浮いているイルカに気付く。 少女が近付いた時には既に、海水浴客はイルカに群がっていた。 「ねぇ、カール、このイルカさん……死んでいるのかな?」 「どうだろう。どこから流れ着いたんだろうね」 少女がそう呟いた直後、イルカから奇怪な音が響く。 その音は、海岸全域に響き、女性達が耳を押さえて蹲る。 音が聞き取れなかった少年は、少女の身体を揺らす。 「どうしたの?ソフィア……ねぇ、ソフィアってば!」 少年がそう言いながら顔を覗き込んだ時、そこには人間の表情を失った少女が奇妙に嗤っていた。 「キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ……」 END
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