another story-3 【軍艦島編】

17/27
前へ
/104ページ
次へ
「ちょっとワシ、ロープ探して来るから、沈んでまわんように見張っててくれ」 そう言って駆け出した和博。 離れて行く背中を見つめていると、何故かもう二度と和博に会えない気がし、私も自然に走り出していた。 「すず、あんたまで行くことないんやないと?そんなに風間君から離れとぉないん?それとも、私と二人きりになるのが怖い?」 苛々した様子で華純がそう問い掛けてくるが、私はその問い掛けを無視して全速力で和博の背中を追いかけた。 確かに私は華純と二人になるのが怖かったのかもしれない。 別に二人きりになったからと言って、華純は私に危害を加えたりはしないだろう。 そんなことは分かっている。 ただ、言葉に出来ない不安が、私の心をギュッと掴んでいた。 華純は私に声を掛けるのを止め、和博の言葉に従うように海に浮かぶ長い髪を見つめている。 私は気付いて無かったんだ。 海に浮いている遺体の口から、一匹の狂鳴虫が這い出て来ていた事に。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2030人が本棚に入れています
本棚に追加