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砂利道の上を全速力で走りながら、和博の口から発せられる震えた声に耳を傾ける。
「虫だ……華純ちゃんが居た場所に……狂鳴虫っぽいのが居った。もしかしたら、あの死体にくっついてやってきたんかもしれん。もしアレが狂鳴虫で間違いないなら、華純ちゃんは狂鳴化した可能性が高い!!」
この島だけは永遠に平和だと思っていた私にとって、耳栓を通して入って来る和博の叫びは、私の身体を恐怖で震え上がらせた。
「和博……うち、華純が居らんくなるの嫌だ……」
耳栓をしているからか、自分の口から漏れた言葉が独り言のように感じる。
そんな私の気持ちに気付いたのか、和博は私の手を握る力を強めた。
「ワシやって嫌や。でも、お前が居らんようになるのは……もっと嫌や!」
大声でそう叫ぶ和博に、私は死ぬまでついて行こうと思った。
いや、死ぬまでついて行かないといけないのだ。
例え、世界が全て狂ってしまったとしても。
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