another story-3 【軍艦島編】

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それから半日が経過し、いつも身を潜めていた場所から五百メートルほど離れた場所に私達は身を隠していた。 いつもより深く感じる闇が、私達の精神を追い詰める。 「華純……出てこないね」 そう言いながら耳栓を取ろうとした私の手を勢いよく掴んで制止する和博。 「取るな……。いつ現れるかわからんし、狂鳴人の声がどれくらいの範囲まで聴こえるかもわからん」 「でも……こんなに長く華純が走ってる音も聞こえないって事は、華純はもしかしたら狂鳴人になっていないんじゃ……」 そう口を開いた時、少し離れた場所で砂利を掻き分けるような音が響いた。 華純に違いない。 和博は血相を変えて私の口を塞ぎ、息を止めるように口を閉ざす。
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