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走って逃げ出すべきか、華純が通り過ぎるのを待つべきか、和博は首をキョロキョロさせて考えている。
戦闘する事も覚悟しているのか、和博は足下に落ちている拳サイズの石を力強く握った。
私は心の中で和博に問い掛ける。
『華純を殺すの?』
眉間に皺を寄せて和博の手の甲に自分の掌を乗せる。
和博の手は、私以上に震えて汗ばんでいた。
石の壁一枚隔てた場所で砂埃が舞っているのが分かる程、砂利を掻き分ける音は大きくなっている。
音を立てないように体勢を変えて私を隠すように立ち上がる和博。
足音が近付く度に、華純の大人びた笑顔が頭の中を駆け廻る。
『本当に華純は狂鳴人になってしまったのだろうか。もしかしたら狂鳴虫を発見して、狂鳴化する前に逃げたのでは無いのだろうか。今近くを歩いている華純は、普通の人間では無いのだろうか』
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