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そう頭の中で考えた時、私の口から微かに声が漏れた。
「か……」
それと同時にすぐ近くで足音は停止する。
和博は何故だと言わんばかりの表情で私の口を覆い、すぐに走り出せるように私を立ち上がらせた。
明らかに動揺している様子の和博が私の手をグッと握り、華純が歩いている道とは反対の方向に向かって駆け出す。
私達が走り出した音は、確実に華純に聞こえているはずだ。
『すず!風間君!!』
その言葉が聞こえてくるのを期待したが、華純の歩いていた方から声は聞こえてこない。
ただ、獣が獲物を見つけた時のような息遣いと足音だけが聞こえてくる。
華純は確実に狂鳴化している。
だが、私が狂鳴化しないという事は、狂鳴化を誘発させる音はまだ出していないのだろう。
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