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耳栓をしていると言っても、足音が聞こえる時点で声は確実に私の耳に入って来るはずだ。
それを和博も解っているのか、走りながらある提案を持ちかける。
「すず!華純ちゃんはワシがなんとかするから、振り返らずにずっと遠くへ逃げろ!」
「嫌や!なんとかするってどうすると?和博が……和博がもし殺されちゃったら、うちはどうしたらええの!?」
私がそう泣き叫ぶと、和博は足を止めて私の背中を軽く叩いた。
「こんな時までネガティブな事言うな!ワシは絶対に死なんから、前だけを見て走り続けろ!!」
和博の背中越しに、腕を振り子のように振って近づいてくる華純の姿がハッキリと映る。
いつもは星の光に感謝していたが、華純の変わり果てた姿を映しだした光が今は憎い。
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