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狂鳴人と化した華純は、血で赤く染まった唇を大きく開き、耳栓など全く意味の無い音を放出する。
「キリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリキリ……」
これでお前も私の仲間だと言わんばかりに、私の頭から手を放す華純。
その音が鼓膜を通して私の脳内に響いた瞬間、私の脳裏に幼い頃からの記憶が流れ出した。
その時、全てを悟る。
この先、身体は自我を失い暴れ続けるのかもしれないが、“私と言う存在”は此処で死を迎えるのだという事を。
走馬灯の最後に少年のように笑う和博の顔が浮かぶが、すぐに血で塗りつぶしたように赤黒く染まって消えていった。
華純は私を喰う事無く背を向け、どんどん離れて行く。
いつの間にか私は自分の意志とは関係なく立ち上がり、腕を左右に動かし始めた。
肩に激痛が走ったかと思うと、腕に青白い血管がぷっくりと浮き出す。
身体は化け物になっていくが、意識は完全には死んでいない。
だが、全て支配されるのも時間の問題だろう。
だって私はもう、人間じゃないんだから。
END
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