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予測できない事態に見舞われた時こそ冷静に対処しなければいけない。
コレは十年前に巨大地震が起こった際、父が言っていた言葉だ。その言葉は僕の心の中で今も生き、行動指針として掲げてきた。
だが、そうも言っていられない状況が目の前で起こっている。僕が今立っている渡月橋の端から見えるのは地獄とも言える光景だった。
関東地方だけの話だと思っていた狂乱騒ぎが、どうやらタイミング悪くこの京都でも発生したらしい。
渡月橋の中腹部で横たわる数名の男性。その男性に、肩幅が異様に広がった女性が覆いかぶさっている。アレがテレビでも言っていた狂鳴人に違いない。
狂鳴人は少なく見積もっても男性の倍はいる。
どうしてこのタイミングで京都でデートをしているのだろうと思った所で後の祭りだ。
弟の土産を買い忘れたから行ってくると言って僕の前から去った綾子が、あの群れと反対の方角に走ったのが唯一の救いか。
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