another story-4 【京都嵐山編】

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食い散らかされた男性の遺体は、狂鳴人達によって川へと投げ捨てられる。 緩やかに流れる川面に広がる赤い血と肉片。 奴らの視界に入る前に移動しなければいけない。まだ数名の男性が食べられ続けているうちに。 悲鳴が聞こえて来なくなったということは既に生き絶えてしまったのだろう。 僕は踵を返して綾子が向かった方角に駆け出した。土産屋の前に散在している観光客は悲鳴をあげながら逃げ惑っている。まさにパニックだ。 その中に綾子の姿がないか探すが、何処にも見当たらない。 顔をキョロキョロさせているうちに、逃げ惑っていたはずの女性が突然足を止め、一緒に逃げていた男性に襲い掛かり始めた。 この病気は声で感染するとテレビで言っていた。まずそもそも、これは病気なのだろうか。 人が人を食べる惨状を、病気の二文字で片付けていいはず無い。
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