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数分前まで営業していたお土産屋が一斉にシャッターを閉め始めた。
人力車を動かしていた男性は人力車を捨て、竹林がある方向へ走っていく。
それに続けと言った様子で五体満足の男達は同じ方向へ走っていった。
その男達を追い掛ける大勢の狂鳴人。
同じ様に逃げ出したい感情に捉われたものの、綾子を置いて行くことは出来ない。
綾子はきっとまだ無事のはずだ。お土産屋の奥に隠れているに違いない。
走っている僕の頬に桜の花弁がくっつく。今が春だと言う事をすっかり忘れていた。綾子とさっきまで桜が綺麗だねと話していたのに。
脳裏に綾子の笑顔が浮かぶ。
さっきまで一緒に居た綾子の顔が、何故か遠い過去の記憶に存在していたように感じるーーーー。
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