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「渡月橋と太陽の光が反射した水面。今日一番の美しい景色だなぁ」
綾子はそう言って僕に微笑みかけた後、手の中で震えたスマートフォンに視線を落とす。
どうやら、同じタイミングで僕のスマートフォンも震えたらしい。
ポケットから取り出して画面を見ると、【特別避難警告】と言う文字と発生地域が羅列されていた。
【奈良県吉野町ーーーー】
【奈良県奈良市ーーーー】
【奈良県桜井市ーーーー】
地域の羅列の最後は、【上記の地域にて狂乱事件が発生しました】と言う文字で締めくくられていた。
綾子は硬い表情でスマートフォンから視線を外し、再び大堰川の川面を見つめ始めた。
大きく息を吸い込み、吐き出すのに合わせて綾子が呟く。
「すぐ隣の県でパニックが起こってるなんて……信じられないね」
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