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黴臭さを堪えながら奥へ進み、物音に耳を澄ませる。すると、押入れの中から服が擦れるような音が聴こえてきた。
どうやら僕の予想は的中した。
綾子はきっとこの中に隠れている。心の中でそう決めつけることで、綾子が実際にこの中に隠れてくれている事を願った。
押入れの襖を開く。そこに居たのは、制服を着たあどけない顔の少女だった。
中学生くらいだろうか。ヘッドホンを付け、膝を抱えて震えている。
僕に気付いた少女は引き攣った表情で四つん這いになり、階段の方に慌てて逃げていった。
「ごめんなさい!勝手に上がり込んでごめんなさい!」と涙声で連呼している少女。
僕は少女の肩を掴んでヘッドホンを上げ、「逃げなくてもいい。彼女を探しているだけなんだ!僕もこの家の人間じゃない」と告げた。
少女は安心した表情を浮かべるが、僕を無視するようにヘッドホンを装着して押入れに戻って行った。
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