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「飛び降りる気か?」
僕はそう声を掛けるものの、少女には聞こえていない。覚悟を決めたように息を軽く吸った少女は窓枠に足を掛けて勢いよくジャンプした。
焦って窓に駆け寄って下を見下ろすと、少女は無事に着地して走り出していた。しかし、走り出している先には狂鳴人が数体歩いている。
『ダメだ……武器も無い状態じゃ抜けれない』
追いかける決意をした僕は「よし」と小さく呟き、少女と同じように二階から飛び降りた。着地すると同時に足裏が痺れたものの、痛みは感じない。
顔を前に向けると、少女はヘッドホンに手を当てた状態で停止している。狂鳴人が歩いている位置までは五十メートルはある。
僕は走って少女の手を取り、長屋のような家屋の隙間道に入っていく。少女は不安そうな顔で僕を一瞬見上げたものの、抵抗することなく全速力でついてくる。
「もう少しだ!」
隙間道に射し込む光が僕の視界に入るのに合わせてそう叫ぶと、少女もコクリと頷きながら走るスピードを上げた。
振り返ると、手をブルブル震わせながら迫ってくる数体の狂鳴人が見える。
「捕まってたまるか!」
そう言いながらその道を抜けようとした瞬間、別の狂鳴人が道を塞ぐように立ち塞がった。
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