八百辻千斗2

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「はい」 スッと伸ばされる彼の腕。手。 そこに持たれているのはパフェのスプーン。長いスプーン。 その先端が私の口の中に飛び込んできた。彼がパフェのスプーンを持って、私の口の中にスプーンの先を入れてきた。 二十三春木くんが、私の口にパフェを運んだ。 パフェ用の長いスプーンで、私にパフェを食べさせた。 まるで、さながら、恋人みたいに。あーん、するみたいに。 甘い。そして酸っぱい。クリームとイチゴ。 「ご褒美です」 「…………」 反則だ。これはダメでしょ。何やってんだよ、アラサーの私。 20になったばかりの男の子にからかわれてどうする。年下の男の子にドキドキさせられてどうする。 ご褒美です、と言った二十三春木。 私はその時、初めて彼の笑顔を見た。 無邪気に笑う、本当の笑顔。童顔の彼が作り出す、可愛らしい笑顔。 「…………」 たまらず目を逸らす。眩しすぎて。恥ずかしすぎて。 私は口の中に入ってきたイチゴを噛みながら、テーブルの色を見つめた。
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