精霊たちの森

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  風の音はますますひどくなっていて、 トーマスたちには、 大きな獣のお腹の中にでも、 閉じ込められたようにすら感じているだろう。 年寄りのこういった語りは、 子供たちにとっては欠くことのできない娯楽だ。 また、これらの森の伝承は、 彼らにとっては全て現実の出来事であり、 人として生活していくためには必須の知識でもある。 ・・・とは言うものの、 夜が近づいてしまえば誰もが家に入らねばならない。 既に日も沈みかけていたので、 ニコラ爺さんは話を締めくくってみんなを家に帰らせた。  「ヤーコブ! おまえ、  爺さんの話を聞いて恐くなっちまったかあ?」  「な・・・なに言ってんだ、  トーマス!  そ、そんなわけあるかよ、  恐くねーぜ!」 わんぱくトーマスは帰る道々、 何かたくらんだようだ。  「へえ、そうかい?  フィーリップ、オットー、  おまえらはどうだい?」  「別にぃ、トーマス、  何たくらんでんだぁ?」 と、フィーリップ。  「いやあ、どうだい?  今度『ユールの日』の頃に一人ずつ、  夜の森に入って度胸試しをするっていうの?」  
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