四、俺に出来ぬ事など何もない

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偉いイザナギ様が、分厚い雲の中、生まれる前のオレにこう言った。 「期待はするな。 龍は神じゃ。 しかも前の女を想うておる。 今回お前は順序的に男に生まれる。 …おお、泣くでない、お前が泣くと儂も悲しいではないか… しかしよう聞け。 神というのは人間ほど情がない。 龍だとて同じじゃ。 女を想うておるというても、それがどれ程か見当もつかん。 心配するな、すでに志乃は運命の相手と出会うておる。 律儀な龍にそれを言うて聞かせい。 ただ、人間と神が赤い糸で結ばれる事は十中八九あり得ぬが… …おお、よしよし、まだ泣くか、泣くでない。 人になれた時、涙が足らなくなるぞ。 まことお前程手を焼かせる魂はおらん。 龍がお前を見つけやすいよう、志乃の匂いをつけてやる。 今世で上手くいかんとも、ヤケになるでないぞ? そうそう、言うておくが異種交流は難しい。 龍は綺麗なままなのに、お前だけがヨボヨボの…ああああ悪かった! 儂が悪かった! 大丈夫だ、どうにかなるやもしれん! 龍はな、まこと良い男じゃて…!」
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