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傘を嬲るような豪雨を想像していたのに、霧雨みたいになってて面食らった。
(雷さん、気が済んだのか…)
外壁に寄せていた自転車はもちろん濡れていた。
ぐちゃぐちゃに押し込んでいたハンカチをポケットから取り出し、とりあえずサドルだけ拭う。
なんの自然災害も起こらないのがこの村の長所。
母が死んでこの村に越してきた。
五年間、一人で、ダラダラズルズル生きてきた。
「 …て言うか、職員をこき使い過ぎじゃねえの? 組合員…」
なんてぼやきながら傘を開く。
いつもなら風呂を済ませ、お気に入りのソファにぐったり体を埋め、テレビの画面をなんとなく眺めている一人の時間。
土井さん家か…。
(…あの祠でも見て帰ろう)
我慢していたため息。
誰かへの当て付けのように大きく吐き出した。
それでも、雇われの身としては呼び出しに応じなくてはならないから苦労する。
(…仕方ない)
覚悟を決めたオレは、
「…あーあ。 どうせ大した事でもないんでしょうよ」
街灯僅かな暗い暗い農道を、ノロノロと急いだ。
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