一、生まれ変わりを信じるか

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… 土井さん宅の裏手には、結構大きな沼がある。 その奥にある普通より大きな祠には龍神様が祀ってあるらしく、この近所の三軒が交替で掃除をしていた。 オレは何故かいつもその祠が気になって仕方がない。 出来れば自分で管理したいくらいだけど、目立って皆から声を掛けられるのは痛い。 だからたまに来ては、掃除が満遍なく行き届いているかとか、水は供えてあるかとか、小姑みたいな事を隠れてしている。 そしてそんな自分も痛いと感じている。 視界の先、小さな集落に続く小道の街灯の下、傘を差した土井さんと娘のみみちゃんを抱っこした奥さんの姿が見えた。 奥さんが土井さんをを責めまくっている。 …というのが、100メートル先からも見て取れる。 きっと内容はこんな感じ。 「そいけん早よう修理してて言いよったとにー!! あがんボロ小屋、すぐに潰るっに決まっとおやんっ」 「そいばってんおまえ、こがんことのあっとか思わんやろうもん」 「そいばってんあんたが、ちゃんとしとったらこがんことにはならんやった!」 「そいばってんおま… っあ、トリちゃん!!」 「あ、鳥越くん!!」 若いころヤンキーでした感が半端ない夫婦が、オレに大きく手を振った。 「…お疲れさまでーす」 こっちも小さく手を振り返す。 ここらはほんと建物がまばらで。 糸電話使っても障害になるようなものはない。 街灯も少なく、変質者が出てもおかしくないのに、何故かそういう事件もない。 とにかく刺激も何もない、平和でつまらない村。
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