一、生まれ変わりを信じるか

15/42
前へ
/360ページ
次へ
「ちょ、納屋ば見てくれんね」 沈んだ面持ちの土井さんが顎で示した先には、村の男たちが既に二十人くらい集まっていた。 こっちに気付いた順に思い思い手を振ってくる。 中には今日行った先の足立さんや、オレの上司の後藤さんの姿もあった。 そして確かに昨日の昼まであったこの先の納屋が、今はただの瓦礫となっていて、曝け出されたコンバインの前方部分が大きく潰れていた。 「 …へえ…」 オレは思わず声を発した。 「完全に雷ではないような気がしますね。 交番にも連絡した方が良くないですか?」 「…した。 駐在の横山が、もうじき笑いながら来る」 「横山さん、箸が転んでも笑いますからね。 あ、安田さんはいらっしゃってますか?」 と、村唯一の整備士の名前を出すと、土井さんの顔が更に暗くなった。 「…来てる。 コンバイン見て、直せんぞって笑ろうとった…」 「安田さん、呑んでました? トラクターとか他の農機具は?」 「呑んどおばってん嘘は言わんけん… …他のはいける。 別んとこに入れとったし…」 「水も引いてますね。 良かったですね」
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1526人が本棚に入れています
本棚に追加