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「ちょ、納屋ば見てくれんね」
沈んだ面持ちの土井さんが顎で示した先には、村の男たちが既に二十人くらい集まっていた。
こっちに気付いた順に思い思い手を振ってくる。
中には今日行った先の足立さんや、オレの上司の後藤さんの姿もあった。
そして確かに昨日の昼まであったこの先の納屋が、今はただの瓦礫となっていて、曝け出されたコンバインの前方部分が大きく潰れていた。
「 …へえ…」
オレは思わず声を発した。
「完全に雷ではないような気がしますね。 交番にも連絡した方が良くないですか?」
「…した。 駐在の横山が、もうじき笑いながら来る」
「横山さん、箸が転んでも笑いますからね。 あ、安田さんはいらっしゃってますか?」
と、村唯一の整備士の名前を出すと、土井さんの顔が更に暗くなった。
「…来てる。 コンバイン見て、直せんぞって笑ろうとった…」
「安田さん、呑んでました? トラクターとか他の農機具は?」
「呑んどおばってん嘘は言わんけん… …他のはいける。 別んとこに入れとったし…」
「水も引いてますね。 良かったですね」
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