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空は暗く、月だけがぼんやりと出てる。
さっき沼が氾濫とかなんとか言ってたなと思いつつ、傘を差したまま先の地面を携帯で照らす。
確かに少し背の高い雑草が、横にべちゃりと寝込んでいる。
「…水はあっという間に引いたとよ」
「床下ですか?」
「まあな…」
「不幸中の幸いですね」
「…ありがたかー。 龍神様にお礼ば言わんばいかん…」
と、全く感謝してない風の土井さんから視線を移した。
ちょうど母屋の裏から、男たちがワラワラと何人か出てきたところだった。
皆で沼を見に行ったらしく、祠も潰れてる、と誰かの声が聞こえてきてドキリとした。
「なんやろうかねえ」
一人が言い、
「龍神さんも怒んさぁばい」
と、また誰かが言った。
( …ほんと人騒がせな…)
潰れた納屋を見ながら、祠もか、となんだか悲しい気持ちになる。
どう見たって雷じゃない。何か大きな物が空から落ちてきた感じ。
「 …まさか」
…UFO?とオレが自分の顎に手を添えてみると、それを聞き取った誰かが、そうか、UFOか、と同調して、そして他の皆が一斉に「ああ」と頷く。
男前の足立さんだけが、ちょっと離れたところで「ぶはっ」と噴き出したのが見えた。
(…んなわけないだろ)
オレは真顔で頷く連中を心の中でせせら笑う。
前から思ってたけど、どんだけ単純だよあんたら。
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