一、生まれ変わりを信じるか

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でもそれはもちろん口には出さず、オレは欠伸を噛み殺す。 もう帰って寝たい。 今日だって一日中組合員にこき使われた。 どうせこの件は駐在の横山さんが来てもお蔵入りになるだろうし、納屋も結局みんなで建て直すんだろし? だからその時また、休日返上で借り出されるのは目に見えてる。 (コンバインは支所のを貸してやるか… 後藤さんだってそんくらい考えるだろ) とかなんとか自分の中で終止符を打ち、もうそろそろ誰か仕切らないかな、て言うかちょっと祠見て帰ろうかな、誰か直すなら手伝おうかな、と母屋の方にのんびりと目を向けた瞬間。 さっき皆が出てきた場所に、ボーッとした光のようなものが見えた。 ( …え?) オレから声が出たのかもしれない。 隣にいた土井さんがオレを見て、その後、オレと同じ方を見た。 「 …なんか、光が…」 皆が、異なったタイミングで、でも同じものを見た。 そして一斉に声を失った。 星の無い空のおぼろげな月。 その光に似ていた。 揺れていた。 オーラという言葉が頭を過った。 その中に男がいた。 その場の空気が、一瞬にして凍りついた。
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