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「 ……神、 …さん…?」
ぽつりと、誰かが言った。
その男は神々しかった。
それが総評。
輝くような銀髪、若干青みがかったような白い肌。
整った顔、眼の縁には赤い隈取、色の抜けた瞳。
離れているのに、それらが浮かび上がるようにくっきりと感じ取れた。
何よりも人外を強調させたのは、耳の上から出た鹿のような角。
雄々しく突き立つような立派なそれ。
はっきりとした黒と水色の粋な着物を着たその男の、
胸元を肌蹴た奥の筋肉は他に見ない程滑らかで美しく。
そしてその男の体だけ、湿気を感じさせないのがまた異様な光景だった。
「……」
荘厳、畏怖。
押されるような気に、その場にいた皆の息は止まったまま、
呆然と口を半開きにしたまま、順々に膝をついていく。
雨はまだぱらついていた。
一人として声を発するものはなかった。
もちろんオレも例外ではなかった。
膝がカクンと折れた。
だから、べちゃっという水音を自然に思っていた。
でもそれが鳴る前に。
いつの間にか傍に来ていたその男が、オレの片方の腕を掴んだ。
「 ……!」
瞬間、オレの体が固く動かなくなった。
皮膚に感じた冷たさと超越的な何かに怯え、
だけど脳の奥の一ヵ所が、チカリと小さく煌いた。
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