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恐る恐るその男を仰ぎ見た。
男の顔は、驚くほど綺麗だった。
決して女性的なものじゃない。
毅然とし、男の色香を全て網羅したしたような、雄々しさと凛々しさ。
人じゃない、と、また思った。
「 …還っておったのか…」
男の声は低かった。
「 …不覚」
そう言って少し笑う声は流れるようなものだった。
頭に、直接響くような声だった。
そしてそのどこか嬉しそうな響きに連動し、チカチカと、脳の同じとこが微かに点滅する。
心臓が、目を覚ましたように微かに疼く。
( …なに…?)
混乱はすぐに困惑に変わった。
こんなのに腕を掴まれてるのに、なぜか少しだけ平静を取り戻し、
初めて、なんでオレ?という疑問が湧いた。
「 …忘れたか」
いつかこの声を聞いたような気がするのは気のせいか。
男が少しだけ寂しそうに目を伏せる様子を、いつか見たような気がするのは気のせいか。
「 …お前は、人だからの…」
予想はしていたと、
意味の分からないことを言いながら綺麗な顔で苦く笑う。
徐々に遠ざかる混乱。
言葉を理解しようとする余裕が出てきた。
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