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龍は女から表情を教わった。
優しくする術を教わった。
そしてその女が死んでからは、今まで以上の孤独を覚えた。
神の心とは元々あって無いようなもの。
人ほどの情緒はない。
だから龍が、それを恋と勘違いするのも無理はない。
孤独になった龍は死んだ女が生まれ変わるのを待った。
三百年、ひたすら待った。
しかし生まれ変わりを望んで儂のところに泣きながら願いに来た魂は、志乃ではなくややの方じゃった。
私はあの龍神様に会ってみたい。
生まれ変わって、ちゃんとした体を貰って、
あの龍神様の薄い目の中に映ってみたいのです。
あの艶のある銀の髪に触れてみたいのです。
と、毎日懇願したのは、あの時腹にいたややの方じゃった。
…先に言うておくが、今からする話は、
恋のキューピッドとなった、儂、イザナギの武勇伝じゃ。
そして昔、女の腹に居ったややと、
その者の為に人になった龍、
二人を助ける村人たちと神々の話じゃ。
皆の者、腹を据えて良う聞けよ。
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