1515人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
「…本当に覚えておらぬのか」
氷のように冷たい顔なのに、なんだかちょっと気落ちしているようにも見え、
「…すみません…」
謝罪の言葉が口を突いた。
でももちろん納得をしてないオレは、
「…て言うか…」
テレビの音に掻き消されるようなオレの小さな声。
恐る恐る、上目遣いで男を見た。
それを男が琥珀色の瞳で受け止める。
「…なんだ」
「…ほ、本当に、失礼ですが…」
「なんだ、早よう申せ」
「 …人違い、では…?」
「……」
男が黙り込んだ。
赤い隈取のある切れ長の目が、一瞬で更に尖り、
オレの全身に寒気が走った。
「…俺は今、お前が忘れておる事に少々腹を立てておる…」
地雷を踏んだと直感したオレの、背筋が凍る。
最初のコメントを投稿しよう!