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「 …生まれ変わりを信じるか」
囁くように言った男が、ゆるりと上半身を起こした。
ギシリと鳴るソファ。
動かないオレの体。
そのオレの前髪を、男が大きな手の平で鷲掴んだ。
「……っ」
そして恐怖に戦くオレの顔を強引に自分に向けさせて、
「 …お前は、志乃の生まれ変わりだ」
言った。
「…俺は、三百年もの間、お前が戻るのを待っておった」
真顔で言った。
「三百年の間、一日たりとも忘れたことなどない」
「……」
「それなのにお前は、忘れたと申すのか」
「……」
思考回路が完全に停止していた。
もし順調に稼働していても、きっと意味はわからなかった。
ただ、男が怒っているのはわかった。
悲しんでるのもなんとなくわかった。
でも身に覚えのないオレは、恐怖に、頭も体も固まったまま動かない。
前髪を鷲掴みにされたまま、その男の綺麗な薄い色の瞳を穴の開くほど、ただ見返す事しか出来ない。
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