1517人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
「…面白い」
オレの上の男の目が、淫虐気味に小さく笑った。
それはもう神様というより、悪の帝王サタン様だった。
「…俺を、どうにかできると思っておるのか」
「……っ」
悟ったオレの全身から、ブワーッと冷や汗が噴き出した。
鹿の角と人間離れした整った顔、冷たい肌。
さっき龍になった、納屋も一瞬で元に戻した。
雨に濡れてなかった、て言うか、なんだか光ってた。
それらが、一気にオレの常識を突き破り。
何処か認めてなかった頑なな部分が音を立てて崩れて行く。
(…っに、に、に、)
っ人間じゃない!!
(こいつやっぱり!!)
人間じゃない…!!
何を思ったのか。それでも逃げようと思ったのか。
考えるより先に、またオレの拳が上がっていた。
その拳が震える。
体が震える。
怖かった。
とりあえず怖かった。
とりあえず自分の身を守ろうと、それしか考えてなかった。
それに気付いた男の目に、また寂しそうな影が落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!