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「生贄とか人聞きの悪か!! 生まれ変わりて言いよんさあやっか!! よかけん龍神様の言うことば大人しゅう聴かんか!! 家族のできて丁度よかやっか!!」
「いやそれ全然関係ないです!! オレ人間以外の家族要りませんから!!」
「な…! 失礼な事ば言うな!! お前龍神様ばなんて思うとっとか!!」
「もちろん人外だと認めてます!!」
そんな喧々囂々とした最中、近くで「あふっ」と欠伸の音が鳴った。
「…もう良い。 気が削がれた。 トリ、布団を敷け」
「え!? 布団!? 泊まるんですか!?」
ギョッとして振り返ると、
「当たり前だ。 ようやく会えたのだ。 お前の寿命まで共に過ごすに決まっておろう」
元凶の男が畳に頬杖つき、ショックを隠せないオレの表情を楽しそうに見上げる。
「…前世ではお前の腹にややがおって手が出せなかった。 その分、この世では存分に楽しませて貰おうと思うておる」
「た…っ、楽しませるって…!?」
男が意味あり気に含み笑い、オレの腕に指で触れた。
つつーっと皮膚の上を這うそれに、ぞくりと全身が粟立った。
「…耐えて見せよ、トリ…」
笑ってる。
「お前は、俺の物だ…」
「……っつ」
――頑固な雨雲が張り詰めてるオレの頭の中。
思い出せないオレは、ドキドキが怖くて、その時は必死で無いものとしたかった。
外の雨はすでに上がっていたけれど、
薄い三日月にはまだ、暗い雲がかかっていた。
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