気付かぬ幸福 気付く不幸

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今日の相手はギャングのボスだった。 チンピラのような男だったが、近隣住民への被害は無視できるものではなかったそうだ。 「心がない、か。そんなわけ無いな」 人を殺すときこそ何も感じないが、感情そのものはある。 報酬を受け取るときや女を抱くときは気分が高揚するし、仕事中にハプニングが起きれば頭に来たりもする。 だがそのたった一言は、俺の脳裏から消えてはくれない。 仕事をこなしても、女を抱いても、寝ても覚めても、ずっと脳裏に居座り続けている。 「無いはずがない。人を殺すときに隠しているだけで、心はある」 今日の相手は人質と共にビルで自爆しようとした男だった。 今日は、仕事をしくじりかけた。 あの言葉が、仕事中にもずっと響いていた。
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