気付かぬ幸福 気付く不幸

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気を紛らわせるために、あれやこれやと試してみる。 銃を弄った。 タバコを吸った。 テレビを見た。 酒を飲んだ。 女を抱いた。 飯を食った。 本を読んだ。 音楽を聴いた。 それでも、紛れてはくれない。 そして気付いてしまった。 俺には感情は残っている。 だがそれは、普通の人間とは比べ物にならないほど薄っぺらい。 本当に楽しいと思っているのか、本当に悔しいと思っているのか、本当に哀しいと思っているのか、本当に怒りを感じているのか、もう俺には分からない。 あの言葉を聞いてから、今日で三ヶ月。 今日の相手は、となりの国の国王だった。 俺は初めて、仕事をしくじった。
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