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「ぶひ・・・ぶひ・・・ぶひ・・・ぶひ・・・」
ブタの『グッドラック』は、もう立ち直れなくなった。
養豚場の片隅でうずくまって、無くしてしまった、あのこの世で1番美しい真珠の玉のことを思い出しては、悔し涙を流していた。
・・・何であの時、目を放したんだろ・・・
・・・あの時を戻せたら・・・
余りにも深い悲しみで食欲さえ失せたブタの『グッドラック』の丸々肥えてた身体は、まるで空気でも抜けたようにみるみるうちに痩せこけていった。
「俺、『トンカツ』になってくるぜ!!」
「わたしは、『トン汁』かな?」
「僕は、『ロースハム』かな?じゃあな!痩せブタちゃん!」
痩せ衰えた『グッドラック』とは反比例して、腹一杯食べてパンパンに肥えた他のブタ達は、次々もトサツ場へ出荷していった。
養豚場に居残った『グッドラック』は。新たな見知らぬブタ仲間と同じ屋根の下で過ごして、声をかけられても、身動きは取らずにただ、壁際でうずくまっていた。
「真珠・・・真珠・・・」
ぽろり・・・
ブタの『グッドラック』の目から溢れた涙の滴が、養豚業者が清掃したての床に滴り堕ちて、玉のように転がった。
・・・あっ・・・
・・・あったぁ・・・!!
その涙の滴は、養豚場の屋根の隙間から降り注ぐ日の光に照されて、瑠璃色に真珠のように輝いた。
「あったぁ・・・!あったぁ・・・!」
ブタの『グッドラック』は、嬉しくて嬉しくて、嬉し涙をポロポロと溢し、滴り堕ちてまた増えていった『真珠の玉』のそのなんとも言えない位の美しさに心が震え、胸がわいてきた。
・・・あの『美しい玉』は、おらの身体の中から飛び出してきたんだわぁ・・・
『グッドラック』は奮い起った。
「あっ!」
「『居残りブタ』が、やって来た!!」
「何か様子が違うぞ・・・」
がつん!!がつん!!がつん!!がつん!!
「いてっ!!」「うわっ!!」「何て力だ!!」「凄い食いっぷり!!」
ブタの『グッドラック』は、他のブタ達を押し退けて、餌場の桶に顔を思いっきり突っ込むと、大胆にムシャムシャと飼い葉を頬張って食いっぱくると、気力がどんどん戻ってきた。
一時は痩せ衰えた身体もみるみるうちに膨らみ、元のパンパンな膨満ブタになっていった。
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