0人が本棚に入れています
本棚に追加
「髪型はどうなさいますか?」
「あの頃のように」
分かっていた。
きっと君は覚えていないんだ。
僕が同じ小学校の同級生で
同じクラスで君を見つけて
恋をして
月日が流れて
君に会いに来たことを
君は知らない。
「あのー」
顔は変わらない。
出身地もあの場所で
口調や雰囲気は
あの頃のままなんだ。
でも
もう君の中に僕はいない。
君の中にいるのは
あの頃の僕ではなく
初めましてのお客様1名。
「どうかしましたか」
ハッと気づくと
僕はまた泣いていた。
君を見つけて泣いたのに
君に忘れられて
また泣いた。
「何でもない。
何でもないんだよ」
「あの、どこかでお会いしましたか?」
僕が君と最も近づいたのは
3年2組の4班の時だった。
あの時の班長は僕で
君は僕の考えたグループ名に
クスクスと笑ってくれた。
そっと
でも聞こえる声で
「グルグルグレープ」
「クルクルクレープ」
「「グレープフルーツグループ」」
僕は3度目の涙を
喜んで流した。
最初のコメントを投稿しよう!