終章

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 ―――走馬灯、という言葉をご存知だろうか。  ビュゥ、と強い風が髪を靡かせ、半歩だけ後退させられるがその足を半歩前に出す。  目の前にある段差を上がった。フェンスは無い。今思えば危険だとここには近寄らなかっただろうが、今はとてもありがたかった。  ―――本来なら影絵が回転しながら写るように細工された回り灯籠のことをいうのだが  住んでいた所がマンションで良かったと思う。住み始めた頃はこんな事になるなんて全く考えていなかったが。  ――――この場合は別の意味を表すんだ。  そういえば、何も書いてないな。普通なら紙かなんかに親宛てにでもなんか書くべきなんだろうが、本当に悪い。  親不孝、で終わるらしい。  ――――それは――――  母さん、父さん。本当にごめん。綾香、本当にごめん。  本当に愛していたんだ。それだけは、信じて欲しい。  ――――死の直前、人生の記憶が蘇ることだ。
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