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今日もまた、暖簾をくぐり、お客が現れる。
「あ、あの……初めてなんですが」
どうぞ、と言い座らせる。
「じ、実は……護身用の包丁を、どこかに無くしてしまいまして。犯罪にでも使われたら大変なので、見つけたいんです。どこか、見当でいいのでつけられませんか?」
護身用……いや、違う。
この人は半年前、妻を殺してる。
一度は警察に疑われるも、嫌疑不十分で釈放。
現在、晴れて自由の身だけど……凶器である包丁に、自身の指紋がついてないか不安になっている。
そのために見つけて、証拠を消したい、と。
「……3丁目の空き地にあります。入り口の右手、深さ1mの位置です」
この人が、証拠隠滅のために埋めてる。
半年前の殺害直後だから、記憶が薄れてるんだろう。
男性は、おざなりに頭を下げ、去っていく。
過程がどうであれ、失くし物は失くし物であり、お客はお客である。
それに、失くし物が仮に見つかったとしても、彼には後に、しかるべき罰が下されるだろう。
この世というのは、悪人が最後まで栄えることはないように出来ているのだから。
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