第1章

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「邪魔するぜ」 少しして、今度は、老齢の男性が訪れる。 「半年前に起きた、女殺しを追ってる。犯人に目星はついてるが、証拠がねぇ。何かないか?」 「……当店は、失った物を探すお手伝いはしますが、そういったのは……」 「固ぇこというなよ。な?俺の失った信頼を取り戻すと思ってさ」 この老齢の男性は刑事であり、先ほどの男性の事件を追ってる。 あの男性が犯人だと直感で見抜いたものの、嫌疑不十分で釈放されたため、築き上げてきた信頼を失いつつある。 ……その信頼を取り戻す、ということなら、この案件は失ったものを取り戻すことになるのかな。 迷った挙げ句、私は伝えた。 「……3丁目の空き地。男性が何かを探しています」 「それをとっつかまえりゃいいんだな!あんがとよ!」 老齢の男性は、意気揚々と店を後にした。 失くした物を探す、その広く具体性のないものには、柔軟な考えが必要だ。
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