第1章

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「…………」 暖簾から微かに見える空を見上げる。 殺人の証拠を隠す男。 それを捕まえようとする刑事。 復讐を遂げようとする女性。 男の目的が果たされるのか。 刑事が正義の名のもと、男を捉えるのか。 それとも女性が、大切な人を失った悲しみを憎しみで晴らすのか。 今の私には、答えが分からない。 何が正しいのか、分からない。 ただ、個人的に主張していいのなら……ベテランの刑事に、男を捕まえ、女性の復讐を止めて欲しい。 自分勝手な道徳観。正義感。 もう、持っていてはいけない感情を基に、私はそう思う。 「……今日はここまで、かな」 お客が来る様子もない。 店の戸締まりをし、束ねていた長髪の髪を解いて、夜の街を歩く。 月明かりのない、真っ暗な闇。 私が歩くには相応しい、ちょうど良い暗さかもしれない。 翌日。3丁目の空き地で、男女の遺体が発見された。見つけたのは、ベテランの刑事。 刑事は現在、殺人容疑で取り調べを受けている。
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