『いつも』が無くなった時

8/8
前へ
/8ページ
次へ
「リク、夕立にやられたのね」 びしょ濡れで帰宅した僕を、母さんは出迎えた。 タオルを持って現れた母さんは、僕の腕の中を見る。 「その猫、どうしたの?」 腕の中で、大人しく眠る猫。 真っ白だけど、少し赤いシミが残っている。 レオの血が色濃く残るその猫を、僕は抱きかかえていた。 「この猫……飼いたいんだ……」 濡れた顔で母さんを見上げ、僕はそう言った。 レオの代わりにはなれない。 それでもレオが助けた命。 僕は、それを大切にしたいと思った。 隣に歩く君はもういない。 あの『いつも』の日常はもう戻らない。 だけど今日からはこの子が、僕の『いつも』の日常を作っていく。 「レオ、これからよろしくね」 僕は笑顔で、レオにそう告げた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加