1人が本棚に入れています
本棚に追加
「リク、夕立にやられたのね」
びしょ濡れで帰宅した僕を、母さんは出迎えた。
タオルを持って現れた母さんは、僕の腕の中を見る。
「その猫、どうしたの?」
腕の中で、大人しく眠る猫。
真っ白だけど、少し赤いシミが残っている。
レオの血が色濃く残るその猫を、僕は抱きかかえていた。
「この猫……飼いたいんだ……」
濡れた顔で母さんを見上げ、僕はそう言った。
レオの代わりにはなれない。
それでもレオが助けた命。
僕は、それを大切にしたいと思った。
隣に歩く君はもういない。
あの『いつも』の日常はもう戻らない。
だけど今日からはこの子が、僕の『いつも』の日常を作っていく。
「レオ、これからよろしくね」
僕は笑顔で、レオにそう告げた。
最初のコメントを投稿しよう!