隣には君はいない

『いつも』が無くなった時

周りの悲鳴が聞こえるまで、何が起きたかわからなかった。
交差点の真ん中で、レオはぐったりしている。
レオの胸元に抱えられた猫は、鳴き声をあげて飛び出し僕の方へ走ってきた。

さっきまで白かった猫が、紅く染まっている。
それで僕は、状況が理解できた。

いつも隣にいたアイツが。
さっきまで笑いあっていたレオが。
今交差点でぐったりしている。
赤い水溜りの上で、ぐったりしている。

猫を助けようとして、レオは轢かれた。
そしてレオは……。

死んだ……？
こんなの、漫画とかゲームとかでしかない話じゃないの？
目の前でトラックに轢かれて、死ぬ？

嘘……だ。
嘘、だよね……！？

止められなくて悔しかったのに。
目の前で親友が死んだのに。

何故か僕には、涙が出なかった。