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腑に落ちない顔をする真琴を見て、ここで島田が割って入る。
「古川、その場にどれくらい『運営』が紛れてたかは知らないけど、写真屋が疑われる流れは悪くないと思って、むしろそれに加勢したはずだ。だって、どんなに疑われても写真屋は潔白なんだから」
「まあ……そうなの……かな?」
「でも、書き替えられた9月28日以降の筋書きを知ってるミツキと高山先生にとっては困ったことになったんだ。……違いますか?先生」
「そうですね。島田くんの言うとおりです」
「え?なに?なんのこと?」
「今回の、ホントだったら中心人物になってたはずの人の存在だよ」
今さら飛び出した〝中心人物〟なる言葉に、真琴は考えることなく食い付く。
「なによそれ、誰よその中心人物って」
島田は、あらゆる感情を圧し殺して真琴を見据える。
それは、答えを知ったときの真琴に一切の余念を与えぬための無表情だった。
そして島田が答えを告げる。
「写真屋の子……大神愛、だよ」
あ……。
そうか。
そうなんだ。
「そうだよね……。考えてみれば高山先生はいっぺん体制側の判断に与したんだ。それを翻したのは愛のことがあったから……だもんね」
「そう。脅しを受けた大神さんが先生を訪ねたとき、先生は大神さんになんて言った?」
先生がなんて言ったかって……。
目の前にいるじゃん、本人。
本人に聞きなさいよ。
このナルシストめ。
胸中で島田に不満を吐きながら、それでも言われたとおり記憶をたどり、真琴は質問に答える。
「ええと、愛が言うには、たしか〝犯人に反省がないことが判った。もう許さない〟みたいなこと言ったみたいよ。高山先生は」
真琴は答えながら自然と高山を見る。
その瞳は静かで、正義を湛えていた。
「それ、ホントはすこし違ったんじゃないかな。このときの大神さんは、持つ情報が少なかったからフィルターがかかってる」
「え?……どういうこと?」
「その時点では、田中美月を襲った犯人は不明……。つまり犯人は無警戒だったんだよ」
「あ……」
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