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「だから高山先生が〝犯人〟という言葉を使ったかどうか判らないけど、とにかくこのとき先生が〝反省なし〟と認めて〝許さない〟と断じたのは、事件をもみ消して、なおも知った者の口を封じようとした体制側……組織のことだったんだ」
……そうか、そのとおりだ。
田中美月を襲った犯人は、15年前のことが事件として発覚したことすら知らなかったはずなんだ。
そして先生が〝許さない〟ことを決めたのは愛のことがあったから……。
じゃあつまり、高山先生がカレン計画を通じて最終的に判断を委ねようとしたのは……。
口を開くと同時に高山の〝複雑な〟執念に思いが至り、真琴の頬に複雑な色の涙が伝った。
「先生は……何年もかけて、愛にすべて委ねようとしてたんですね?田中美月の件と、それを葬ろうとした件の犯人の……その、処断を」
「そうですね。古川さんが早々に結論に至ったとおり、私は〝田中美月事件〟と〝学生〟を天秤にかけました。これは、片方が紛れもない悪だったので、当然、目的は果たせました。犯人の逮捕というかたちで」
「はい。でも、それだけじゃなかったんですね」
「はい。私はもうひとつ天秤を用意したんです。つまり片方に〝事件の隠蔽〟もう片方に〝カレン運営〟を載せた〝罪の天秤〟です」
「そうですね。そして先生はその天秤を釣り合わせたい……。そう思ってるんですよね」
ここで高山がすこし首をかしげて自問する。
そして、高山〝教授〟ではなく〝高山徹〟個人としての動機を語る。
「4年前、なんの裏工作もなく田中美月事件の犯人が捕まっていれば、私はそれでよかったんです」
「はい」
「でも大学は国の権威を借りて、大学の体面を保つことを選んだ。……犯罪死を見抜けなかった警察の落ち度にもつけ込んで」
「……はい」
「古川さん、私はこの大学を愛しています」
「……はい」
「小さな体面を保つために為した4年前の隠蔽工作……。私は今、これが明るみに出ることをなにより怖れています」
「はい。だから田中美月事件が表沙汰になると同時に公になる可能性が高かった4年前の陰謀に、高山先生の陰謀を釣り合わせようとした……。つまりこっちは両方とも表沙汰にならないようにしたいんですよね」
「そうです。でも、それを決めるのは私じゃない。私であってはいけない……。そう思っていました」
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