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「つまりその、決める人というのが愛……。写真屋さんの娘だったために巻き添えになった大神愛なんですね?」
「はい。そのつもりでした」
でしたってことは、今は違うんだよな。
鈍い自分でも解る。愛に代わって、自分が〝決める人〟になったんだ。
でもホント、なにが決め手だったんだ?
「……どうして私だったんですか?」
投げた問いが部屋をさまよう。
まるで独り言のようなその問いかけは、高山に向けたものともミツキに向けたものとも、あるいは島田に向けたものともいえた。
また、あるいは自問とも……。
「アンタが貧乳だからだよ、真琴」
振り返ると理沙がいた。
音も立てずにドアを開け、その割にはビシッと人差し指を真琴に突きつけている。
ここでアンタが登場すんの?理沙……。
「……清川、どういう意味だ?それ」
すぐに反応できたのは島田だった。
言葉を向けられた真琴はその意味を掴もうとし、高山はただこの珍入者に驚くだけ……。
まったく驚いた様子のない島田の態度は、まるで理沙の飛び入りを予想していたかのようだった。
まあ、試験が終わってから私のストーカーになってたんだから……。
そりゃ尾けるよね。この部屋まで。
「私の言うことに意味があると思うなよナル夫」
差す指先を島田に移して理沙が答える。
「……ないのか?……意味」
「貧乳なのにおとなげボーボーだから選ばれたんだよ真琴は」
……理沙……ここがどこだか分かってんの?
「清川、ここには教授もいるんだ。日本語で言ってくれ」
「え?……そうね、なんてえの?つまりその……」
(裏表がなくて思慮深いから。そんなトコロじゃないの?訳すなら)
「そうそう、そんなカンジ。さすがだねミツキ」
……貧乳って言葉は、いつの間に「裏表がない」って意味を持ったんだ?
そんなやりとりの中、知識を総動員して状況を理解した高山が理沙に尋ねる。
「ええと、あなたは清川さん……。つまり、もうひとりのチームメイトですか?」
「ですです。ある意味心中人物です」
「……そうですか。それならその……」
(先生、理沙もこの場にいて然るべきだよ。半分くらい知ってる)
「……ミツキ、アンタ、ナルっちのときは〝ぜんぶ知ってる〟って言わなかった?」
(ひひ……。興味のないことは記憶に残らないでしょ?理沙は)
「……よく理解してんのね、さすがに」
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