10月7日(金)

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「清川さんにお尋ねしてもいいですか?」 「はい」  枠にはまらない理沙の言動は、その人となりをよく伝えたようで、顔を合わせたばかりの高山が理沙に尋ねる。 「清川さんはどう思いますか?この騒ぎのこと」 「……ザックリしたお尋ねですね。ずいぶんと」 「はい。でも清川さんは、その方が話しやすい人なんじゃないかと」  高山の言葉に、理沙はまんざらでもない顔で答える。 「えっと……。まずムカッっときましたね」 「はい、そうでしょうね」 「それから〝ん?〟ってなってから、へぇ……ってなったカンジです」 「……そう……ですか」  このやりとりを真琴は、高山と理沙の顔を交互に見ながら聴く。  二人とも真剣な顔してるけど……。  これ……成り立ってんの?……会話は。 「はい。で、今は〝ほう?〟ってカンジです」  理沙……アンタ……。  どこまでそのスタイルでいくのよ。 「内実は清川さんにとっても意外だった。そういうことですか?」 「はい。思ってた以上に〝運営〟……高山先生は正義の人でした」  理沙の口から零れた「正義の人」というワードに高山が驚いてみせる。 「正義の人……ですか?まだ私のことをそう言うんですか?清川さんは」 「え?違うんですか?」 「あ、いえその……やっちゃいけないことをやってますので……」  相変わらず理沙の表情は豊かだ。  ……見ていて飽きないほど。  かたや高山先生は、次々いろんなことを暴かれて、すっかり反省モードのままだ。  そんな気配を感じ取った理沙が告げる。 「あ、先生」 「はい」  高山に向けた視線はそのまま、理沙は島田を指差して言う。 「このナルシストがカッコつけて先生をやり込めたみたいになってますけど気にしなくていいですよ、こんな若造」 「え……いえ、そんなことは……」  いきなり登場してチームメイトをこき下ろす理沙に高山は戸惑いを隠せない。  それでも理沙の口は止まらない。 「いいんです。こういう演出じみたのが好きなイタい人なんです」 「…………。」  チームメイトをここまで悪く言う理沙に、さすがの高山も返す言葉を失う。  それを眺める真琴も、理沙が乱入した意図が掴めないので、ここで口を挟む。 「……理沙」 「ん?」 「アンタ、なにしにきたの?」 「え……」
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