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通常人であれば即答して然るべき質問に、理沙の口が動きを止める。
そして理沙は、目を閉じて首を傾ける。
この雰囲気はいつもの理沙……。
つまり勢い……。なにも考えてなかったんだ。
真琴がそう理解しようとしたとき、理沙の口が動いた。
「そうね……まあ、ナル夫が偉そうにしてるのが気に食わなかったのと……」
……理沙がそう思う理由は解る。
隠されていた事実を暴くにしても、あんな……2時間ドラマの大詰めみたいな雰囲気にしなくてもよかったんだ。
島田くんはただ、知ったこととそれを基に推測したことをそのまま高山先生に問えば済んだはずだ。
「あとは……。仲間じゃないみたいでイヤなカンジだったからだよ、真琴」
そう言い終えたとき、理沙は目をしっかり開けて真琴を見ていた。
その表情は、それが本心であることを伝えるものだった。
そして理沙は、まず島田に視線を投げてから高山を見つめて言う。
「先生、とどのつまり、真琴にはぜんぶを知ったうえで結論を出してもらいたい……。そうですよね?」
唐突な問いであったが、高山は間を置かず返す。
「そうですね……そうなります。まあ、隠したままにしたい部分もあったりして、結局は島田くんに暴かれましたが」
自省のお手本のような態度でそう口にする首席教授に対し、理沙が意外な答えをする。
「先生、この場所に反省は要りませんよ。……少なくともこの男に対しては」
理沙がそう言いながら指差していたのは島田だった。
この理沙の態度に真琴は少なからず驚いたが、当の島田に動揺は認められない。
「……そうか、それが理由か。清川が部屋に飛び込んできたのは」
「そうよ。おかしい?」
「……いや、これはたしかに清川が正しい」
……は?理沙が正しい?なにが?どこが?
真琴は戸惑う。そしてそれは島田と理沙のやり取りを眺める高山も同様であるようだった。
そして真琴は島田に尋ねる。
「あの……島田くん」
「ん?」
「……どゆこと?」
島田は相変わらずのポーカーフェイスで真琴の問いと視線を受け流す。
「……清川」
「うん?」
「俺が白状した方がいいのか?それとも清川が名探偵になるか?」
相変わらず他の者を置き去りにしたやりとりだったが、これに理沙は「ああ」と漏らし、腕を組んで「う~ん」と唸ってみせた。
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