10月7日(金)

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 ん?つまり、白い携帯電話が鳴ったのは理沙の見込みと違ったってこと?  でも、かけた先は松下さんだし……。  やっぱり解んないな、これは。 「……考えようとしたけど解りそうにないから教えてくんない?どういうこと?」 「こっちが鳴ると思ってたんだよ。清川は」  そう言って割り込んだ島田の手は、折り畳み式の黒い携帯電話をプラプラと揺らせていた。 「そう、それよそれ」 「ま、その可能性もあったよな。たしかに」 「でしょでしょ?くそう、惜しかった」 「そんなに悔しがんなよ。隠しきれるもんじゃなさそうだから出しただろ?こうして」  島田は、理沙に答えたあとで真琴を見る。  その表情は、なにかを見定めようとしているようにも、なにかを教えようとしているようにも見えた。  で、なんで島田くんが持ってんの?それを。 「なんで島田くんが持ってんのよ、それ」 「持たされたからだよ」  答える島田に動じる気配は微塵もない。  それはいったい、いつのこと……。  真琴は勢いでそう言いかけたが、すんでのところで思い留まる。  ……重要なのは〝どうして〟の方だ。  なんで島田くんが持ってんのよ。  警察が協力者に貸し出す携帯電話を。 「……真琴」 「なに?」 「今、真琴にとって〝運営〟といえば誰のこと?」  理沙の問いかけは、淡々とした口調に相応しく極めてシンプルだ。  しかし真琴は「高山先生に決まってんじゃん」と言いかけて開いた口を閉じた。  そうして再度口を開く。 「あんがい深いのね、その質問」 「でしょ~?しかも一枚岩じゃないカンジ?」 「うん。この春まで運営の中心にいたのは高山先生だけど、今はそう単純じゃないよね」 「そそそそ、思惑が微妙にズレてたりすんのよ」 「……だから島田くんがそのケータイ持ってんのね」 「うん。この男、学生みんなの代弁者のフリして、中身はドスケベだよ」 「……どういう意味だ?それ」 「ナル夫アンタさ、真琴にナイショで松下さんの手先になっといて、聴きたいのは私の方だよ。その行動の意味を」  松下さんの手先……。  つまり島田くんは島田くんで〝協力者〟になってたんだ。  言うまでもなく松下さんの。
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